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トキ(朱鷺)の生態と絶滅危惧の現状|佐渡で蘇る奇跡の鳥

一度は絶滅しながら、人の手によって蘇った鳥がいます。学名 Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)——日本そのものを名に冠するトキは、2003年に国産の最後の1羽が死亡し野生絶滅に追い込まれましたが、日中両国の保護活動により、2024年末時点で野生下に推定576羽まで回復しています。消えかけた命が里山に戻るまでの物語は、保護活動の可能性と課題を同時に教えてくれます。


目次

トキ(朱鷺)とは?

学名:Nipponia nippon

トキは、ペリカン目トキ科に分類される鳥で、本種だけでトキ属を構成する1属1種の希少な存在です。

基本データ

項目内容
分類ペリカン目 トキ科 トキ属
体長・翼開長全長約75〜80cm、翼開長約130〜140cm
体重約1,700〜2,000g
寿命オスメスともに約15歳

外見の最大の特徴は「朱鷺色(ときいろ)」と呼ばれる翼と尾羽裏面の淡いオレンジ色です。非繁殖期は全身がほぼ白色ですが、繁殖期になると首すじから黒い分泌物が出て、頭や背・翼が灰黒色に変化するという独特の特徴があります。顔の皮膚は朱色で露出しており、先端が赤い黒いくちばしを下向きに湾曲させてエサを探します。

習性は、水田や湿地の泥の中にくちばしを差し込み、ドジョウ・タニシ・サワガニ・カエル・昆虫などを捕食する肉食です。春から夏の繁殖期には大木の枝に巣を作り、産卵・育雛を行います。成熟は2歳で、多くは3歳から繁殖を始めます。

[SWELL: キャプションボックス(アイコン:💡 / タイトル:「豆知識」)]
トキは首を伸ばしたまま飛ぶ珍しい鳥です。サギは首を曲げて飛びますが、トキはコウノトリやツルと同様に首をまっすぐに伸ばした姿勢で飛行します。また、翼を広げると最大140cmにもなり、飛翔時に朱鷺色の美しい羽が映えます。
[/SWELL]


絶滅危惧のステータス

評価機関分類カテゴリステータス略称更新年
IUCN レッドリストEndangered(絶滅危惧)EN2018年
環境省 レッドリスト絶滅危惧IA類CR2019年

IUCNの「Endangered(EN)」は野生絶滅の一歩手前の「危機」カテゴリ、環境省の「絶滅危惧IA類(CR)」は国内最高の危機度を示します。かつて環境省のカテゴリは「野生絶滅(EW)」でしたが、放鳥後に野生で繁殖する状況が5年以上継続したことが評価され、2019年に1段階引き下げられました。これ自体が保護活動の成果です。

野生下の推定個体数は、2024年末時点で約576羽(日本・佐渡島を中心、トキ保護募金推進委員会調べ)。2019年時点の世界全体では、中国約2,600羽・日本約600羽・韓国約363羽が確認されており、個体数は増加傾向にあります。

[画像: alt=”佐渡島の田んぼを飛ぶトキの群れ” / caption=”2008年の放鳥開始以降、野生復帰は着実に進んでいる” / 推奨内容: 佐渡島の棚田や田んぼの上を複数のトキが飛ぶ写真]


どこに住んでいる?

かつてトキは北海道から九州・四国まで日本全土、そして中国・朝鮮半島・ロシア極東地域に広く分布していました。しかし乱獲と生息環境の悪化により激減し、現在の主な生息地は新潟県佐渡市(佐渡島)です。

生息環境は里山の景観と強く結びついており、水田・湿地・棚田などを餌場とし、周辺の雑木林や大木を営巣地として使います。深い原生林ではなく、人の暮らしとともに維持されてきた里山の環境そのものがトキの生息地です。

現在、日本では佐渡島を主な拠点としており、一部個体が本州へ渡ることも確認されていますが、本格的な生息域の拡大はこれからの課題です。環境省は令和8年度(2026年)上半期に石川県能登地域でも初の放鳥を行うことを決定しており、生息域の拡大を目指した取り組みが進んでいます。

[画像: alt=”トキ生息地 佐渡島の棚田マップ” / caption=”現在の主な生息地は新潟県佐渡島。能登地域への放鳥も計画中” / 推奨内容: 佐渡島の位置を示した日本地図、または佐渡島内の生息分布図]


トキに会えるスポット

日本国内

トキの公開展示を行っている施設は限られています。最新情報は各施設の公式サイトでご確認ください。

  • 佐渡市トキふれあいプラザ(新潟県佐渡市)― 自然に近い大型ケージで飛翔・採餌・巣作りなどトキの生態を間近に観察できる施設。入館無料(月曜休館)
  • いしかわ動物園「トキ里山館」(石川県能美市)― 日本の動物園でトキを公開展示する唯一の施設。棚田風の湿地を再現した環境でトキが暮らす様子を観察できる(2016年オープン)
  • 多摩動物公園(東京都日野市)― トキを飼育・保護増殖しているが、現在は非公開。保護の取り組みを担う重要拠点

※佐渡トキ保護センター本体は一般公開されていません。野生のトキは佐渡島の里山で観察できる可能性があります。

海外・野生観察

  • 陝西省洋県(ようけん)・中国― 1981年に中国で野生個体が再発見された場所。現在も多くのトキが生息する野生観察の聖地
  • 慶尚南道・韓国― 中国と日本からの個体提供を受けた放鳥プロジェクトが進み、野生個体が確認されている
  • 佐渡島 野生探索(新潟県)― 佐渡島の田んぼや川沿いを散策することで、野生のトキに出会えるチャンスがあります

なぜ絶滅の危機に?

1. 乱獲
明治時代以降、羽毛を装飾品や布団に使うための狩猟が急増しました。当初トキは狩猟規制の対象外とされており、保護が遅れたことで個体数は急減。大正末期には一度ほぼ絶滅したと考えられていました。

2. 農薬による餌場の崩壊
戦後の高度経済成長期に化学農薬が大量使用されるようになり、水田のドジョウやタニシなどトキの主食が激減しました。トキは食物連鎖の上位にいるため、農薬による生体濃縮の影響も受けやすく、致命的な打撃となりました。

3. 生息地の消失
山間部の水田の荒廃や湿地の宅地・農地転換が進み、トキが必要とする里山の環境が失われていきました。

保護活動の成果として、環境省は1997年に中国から譲り受けたつがい「友友・洋洋」からの人工繁殖に1999年に成功。2008年から佐渡島での放鳥を開始し、2024年秋までにのべ531羽を野生に戻してきました。野生での繁殖も2012年から確認されています。

読者にできることとして、トキの保護活動を支援するトキ保護募金推進委員会への寄付や、佐渡島での環境保全型農業(農薬・化学肥料を抑えた「朱鷺と暮らす郷」認証米など)を選ぶことが、間接的な保護につながります。


まとめ

トキは、一度は「野生絶滅」まで追い込まれながら、日中両国の粘り強い保護活動と佐渡の里山を守る地域の努力によって、野生個体数を580羽近くまで回復させた希有な成功例です。しかし環境省のカテゴリはいまだ絶滅危惧IA類(CR)であり、その歩みは続いています。「ニッポニア・ニッポン」の名を持つこの鳥の現在を知ることが、生物多様性保全への第一歩になります。他の絶滅危惧種についてはこちらもご覧ください。


参考情報・出典

#情報源
1環境省 自然環境・生物多様性「トキ」
2環境省 佐渡トキ保護センター
3トキ保護募金推進委員会「トキについて」
4新潟県「トキの野生復帰に向けた取組」
5新潟県 佐渡トキ保護センター公式サイト
6トキ – Wikipedia(2025年10月更新版)
7nippon.com「絶滅した特別天然記念物トキはなぜ佐渡島で復活したのか」
8Green Times(チューリッヒ保険)「絶滅したトキを再び大空へ!」
9Eleminist「国産トキが絶滅した理由と背景は」
10いしかわ動物園「トキ里山館について」
11能登地域トキ放鳥受入推進協議会「トキ里山館について」
12アリエスコム「トキのいる動物園は?」

情報取得日:2025年2月22日

※野生個体数は調査手法や時期により変動します。最新データは環境省および佐渡トキ保護センターの公式発表をご参照ください。

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